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卒業生の姿に見る「自己肯定感を育む教育」…光塩 - 読売新聞

 光塩女子学院中等科・高等科(東京杉並区)は、自己肯定感を育む教育を重んじている。教員たちは、一人の人間として生徒と向かい合う中で、生徒の中にある可能性や個性を探り、生徒が自分の居場所を見つけて、やりたいことに打ち込むことができるように導くのだという。その教育を実践する上で重要な役割を担う独自の「共同担任制」などについて、広報主任の亀田朋子先生に聞き、また社会人として活躍している卒業生3人に、在校中に体験した光塩の教育について語ってもらった。

 取材に応じてくれたOGは、弁護士の原江里奈さん、容器メーカーの開発部門に勤務する足立詩織さん、化粧品会社でマーケティングを担当する安田亜実さんの3人。いずれも2008年に卒業した74回生で、亀田先生の教え子だ。

 3人は昨年9月、同校の学校説明会にOGとして登壇し、在学中の思い出などを語っている。光塩の自己肯定感を育む教育を、受験生の保護者らに実感してもらうために亀田先生が声をかけたのだ。

 亀田先生には、彼女ら74回生について、印象深い思い出がある。

 一つは体育祭での出来事だ。毎年繰り広げられる応援合戦では学年ごとにテーマを設定する。74回生が高3の最後に選んだテーマは「GIFT」だったという。「テーマについての説明を聞く前は、『さまざまなギフトをもらってきた自分たち』の意味で、周りの人たちへの感謝を表しているのかなと思いましたが、それに加えて、『自分たちがGIFT』という、なんとも彼女たちらしいメッセージが込められていました。『自分たちがこの世に存在するだけで喜んでくれている人たちがいる』。そう思える人生は幸せなものだと、うれしくなったことを覚えています」

 もう一つは、卒業後のことだ。3人は、仲間が結婚する際に母校を訪れ、懐かしい場所を背景にビデオメッセージを撮影したという。「仕事でも責任が増し、それぞれ自分のことで精いっぱいに生きている中で、仲間を祝福するために楽しそうに手間をかけて準備をしている。他者への感謝、他者の幸せを自分の幸せと思える心。それを当たり前のように生かして暮らしていることを知って、卒業生の輝いている姿を直接見ていただくことが、分かりやすい説明になるのではと思いました」

 これらのエピソードは、3人が在校中、深く自己肯定感を育み、それを卒業後もしっかり自分の生き方としていることを証している。この自己肯定感の大切さについて亀田先生は、「ありのままの自分で大事にしてもらえる。今限界があっても認めてもらえる。そのことを実感すると人は安心し、心に余裕が生まれます。自分のできることを精いっぱいやることで他者のために生き、同時に他者を尊重し協力し合う団結力が育ちます」と説明する。

 この時の学校説明会で当時の荒木陽子校長は、「あなたがたは世の光、あなたがたは地の塩」という同校の建学の精神に触れ、「光と塩が必要不可欠なものであるように、人は誰もがかけがえのない存在です。本校の名称にある光と塩は、存在そのものを肯定する言葉なのです」と語っている。生徒の自己肯定感を育むことは同校の教育の根幹だと言えそうだ。

 原江里奈さんは、慶応大学の法学部法律学科、さらに同大法科大学院で学び、現在は弁護士として企業の法務部で働いている。足立詩織さんは、東京理科大学に進んで化学を学び、現在は容器メーカーの開発部門で働いている。安田亜実さんは、早稲田大学スポーツ科学部に進学。現在は化粧品会社でマーケティングの仕事に就いている(以下、敬称略)。

 ――まず、学校生活で特に心に残っていることは何ですか。

  思い出深いのは、部長を務めていたバドミントン部の活動です。ユニホームや練習メニューの変更を提案したり、後輩の指導法について議論したりと、熱心に取り組んでいました。

 安田 私も同じバドミントン部でした。週2回の活動に思いきり集中して、情熱をもってやっていました。

  ああでもない、こうでもないと話し合って、一つずつアイデアを実現させるのが楽しかったですね。どんな意見も、先生から頭ごなしに否定されたことはありません。今思えば、あのとき先生方が私たちの自主性を重んじてくださったから、自信を持っていろいろチャレンジできたのだと思います。

 足立 私も真っ先に思い浮かぶのは部活です。ミュージカル部に所属して、「光塩祭」でクラブ活動の成果を披露するために、毎年1年かけて舞台の準備をしました。みんなでビデオを繰り返し見てはセリフや衣装を修正し、こだわって作っていました。部員が100人近くいたので、しょっちゅう意見がぶつかって大変でしたが、いつもとことん話し合って解決していました。みんなを信頼していたからこそ、諦めたり投げ出したりしなかったのだと思います。ここで味わった達成感が忘れられなくて、大学でも学園祭の実行委員をやりました。

 卒業生たちの話からうかがえるように、同校の教育の一つの特長は、先生と生徒との密な関わり方にある。それを支える仕組みが独自の「共同担任制」だ。約150人の学年全体を担当教科や性別、年齢のさまざまな教員6人で受け持つ。これによって、生徒を多くの目で多角的に、こまやかに見守ることが可能になるという。

 ―一共同担任制について、在校時はどんな風に感じていましたか。

 足立 担任の先生方は、常に自分を見守ってくれる存在。親のような存在がたくさんいる感覚で、心強く思っていました。

 安田 確かに、常に誰かが自分を見てくれているという安心感がありました。進路はあの先生、人間関係はこの先生といった感じで、内容に応じていろんな先生に相談していたように思います。1学年3、4クラスと少なく、家庭的な雰囲気のなか、自分のペースで学べたのが良かったです。

 ――文理選択や大学進学、就職などでも、先生たちと相談しましたか。

 足立 私は中学の頃から英語が好きで、高校に進むと化学の面白さにはまって、英語と同じくらい夢中になりました。だから高2の文理選択では迷いました。そこで化学の先生に相談し、じっくり話を聞いてもらいながら、自分のやりたいことをゆっくり考え、納得して理系を選びました。今考えると、化学の先生に相談した時点で気持ちは傾いていたのかもしれません。得意不得意だけでなく、信頼する先生のアドバイスで、心が引かれるほうを迷いなく選ぶことができました。

  私は理系科目の方が得意でしたが、当時から弁護士という仕事に興味があって法学部に進みたいと思っていたので、迷わず文系を選びました。先生方は、さまざまな選択肢を示した上で、私の意思を尊重してくださいました。1年浪人したときはつらかったですが、温かい言葉をかけてくれる先生や、体調を気遣ってくれる同級生の優しさが力になりました。

 安田 私は大学受験で複数の志望校に受かって迷いが生まれたとき、「自分が行きたいと思う方を選ぶといいよ」という先生の言葉に助けられました。そして大学では、アイスホッケー部のマネジャーを務めながら、以前から志していたスポーツビジネスを勉強しました。部活での経験を通して、商品の魅力を伝えることでお客さまに笑顔になってもらえる仕事への興味が高まり、今は化粧品会社で日焼け止めブランドのマーケティングを担当しています。

 亀田先生 好きなこと、おもしろいと思えるものを見つけられるよう、生徒それぞれの中にある可能性を一緒に探す作業をしている、そのような気持ちで生徒と向き合っています。生徒たちがいろいろな選択肢の中から将来について考えられるよう、このような道もありますよ、というさまざまな視点のヒントを伝えています。

 3人の話からはそれぞれ、自分の将来の悩みを一緒に考えてくれる存在が近くにいたことが分かる。同校の共同担任制は、生徒の悩みに一緒に向き合い、生徒たちを支える力となるという。

 共同担任制という制度の中には個人面談がある。年齢も経験もさまざまな教員と学期ごとに1対1で話す機会だ。この体験を中1から繰り返すことで、自分の気持ちを素直に伝える喜びを知ることができる。

 「問題があるから話す、悩みを相談する、というのではなく、平常時に、ただ自分の好きなこと、興味のあること、気になっていることを話します。教師と生徒というより人間と人間として、ゆっくり、じっくり自分自身について話す。これだけでも、自己肯定感につながるものが芽生えると思います。また、多角的な視点で見守る中で、生徒本人も保護者も気付いていない、それぞれの得意分野や個性を伝えることも可能となります」

 この面談について亀田先生は「指導ではなく並走、伴走です」と説明する。「面談だけでなく、光塩という学校全体の姿勢が、生徒たちに『自分の居場所はここだ』という安心感を与えています。だからこそ、高校生になって、現在得意なことはこれだけれど、やりたいことはこっち、という一歩が踏み出せますし、チャレンジもできます。成功か失敗か、自分がどう感じるかにかかわらず、応援されているのです」

 「大切なことは、ゴールを設定することではなく、今進んでいる道が、自分にとって納得できる、そしていつでも見守られているということを実感してもらうことです。私たちは生徒を信頼し、その判断を応援します」

 (文:佐々木志野 写真:中学受験サポート)

 光塩女子学院中等科・高等科について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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May 18, 2020 at 01:21PM
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