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大リーグで生きる: やっと開幕 数字で見るMajor League Baseball - 日本経済新聞

昨年4月、米アナハイムで行われたエンゼルスの本拠地開幕戦前に並ぶ大谷(17)ら=共同

昨年4月、米アナハイムで行われたエンゼルスの本拠地開幕戦前に並ぶ大谷(17)ら=共同

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で4カ月弱遅れ、7月23日、いよいよ大リーグが開幕する。オーナー側が年俸減額を突きつければ、選手側も一歩も引かない。ファン不在のすったもんだの末にも合意に至らず、大リーグ機構(MLB)が独自に開幕日や試合数を決定できる権利の行使を全30オーナーが合意。選手会も応じた。60試合は1870年代以来の短いシーズンとなる一方、7月まで開幕がずれ込んだおかげで、大谷翔平が2年ぶりに開幕から二刀流に復帰。いよいよ熱い夏が始まる。

■今季の日本選手は9人

これまで大リーグでプレーした日本選手は60人あまり。2020年は久しぶりに筒香嘉智、秋山翔吾ら野手が2人も渡米し、日本選手は9人となり、昨年開幕時から3人増えた。昨季開幕時の調査によると、米国50州以外の出身者は20カ国・地域から251人(28.5%)のうち、ドミニカ共和国、ベネズエラ、キューバ、プエルトリコ、メキシコに次ぐ6番目だった。

大リーグの歴史は19世紀半ばまで遡り、ナショナル・リーグ発足は1876年。1901年にアメリカン・リーグが誕生し、03年にワールドシリーズが始まった。米独立13州、鉄鋼業が栄えた中部にチームが集積しているのもそんなわけだ。サンフランシスコ・ジャイアンツ、ロサンゼルス・ドジャースも東部からの移転組だ。

■大リーガーの年収はプロ野球の10倍!?

メジャー契約は1チーム40人、うちベンチ入りできるのは26人。19年の平均年俸が436万ドル(4億5780万円)だ。一方、日本のプロ野球は3985万円。育成、外国選手を抜いた1、2軍選手の平均とはいえ10倍も差がある。最高年俸選手も菅野智之(巨人、30)の推定6億5000万円に対し、大リーグは大谷のチームメート、マイク・トラウト(28)の3770万ドル(約39億5800万円)。

大リーグ最高年俸選手、エンゼルスのマイク・トラウト。東部ニュージャージー州出身で子供時代はヤンキース、ジーターのファンだった=USA TODAY Sports

大リーグ最高年俸選手、エンゼルスのマイク・トラウト。東部ニュージャージー州出身で子供時代はヤンキース、ジーターのファンだった=USA TODAY Sports

新型コロナの感染拡大で開幕が延期。3月26日「試合数に応じた日割り」の年俸を支払うことで合意したが、コロナ禍が深まるにつれ、オーナー側はさらなる減額を要望、選手会と対立。最終通告の「60試合、試合数に応じた日割り」案も選手会は拒否し、合意なきままシーズンインする。もし、通常162試合の37%しか行わない現状での日割りとなると、トラウトの年俸は1394万9000ドル(約15億円)となる。

■コロナ禍をもろに受けたマイナーリーグ

マイナーリーグとなると、日米の立場が逆転する。日本は年俸420万円が保障されるが、マイナーリーグの1番下の1Aは連邦最低賃金並み(1日8時間×月20日労働で計算)。マイナーリーガーはシーズン中(長くて5カ月ほど)しか給料は支払われない。低賃金には根強い批判があり、21年から週給2万円前後アップする。

日本では2軍も開幕したものの、米国のマイナーリーガーは次々と契約を解除されたあげく、今シーズンは中止が決まった。1901年の設立以来、初めてだ。今季の給料は支払われる予定だが、かねてから提案されていたチーム数の削減が進み、2021年からは160から120になるとされている。

大谷の年収は渡米前(推定2億7000万円)の3分の1以下だ。大リーグはフリーエージェント権取得までの6年間は基本、最低年俸55万5500ドル(約5800万円)に抑えられる。大谷は渡米時23歳。大リーグの既定で25歳に達しないと米国外からの選手は最低年俸でしか契約できない。渡米時25歳だった田中将大らと大差がついた。

大リーグ通算3年経過すると、年俸調停の権利を得る。スペシャルな活躍をし、チームも手放したくない選手に高額契約の道が開ける。好例がトラウト。3年目の14年、年100万ドル(約1億500万円)で契約。翌年から6年1億4450万ドル(約152億円)となり、19年には12年4億2650万ドル(約448億円)と「最も稼ぐ」選手となった。今季3年目に入る大谷、年俸の行方も注目だ。

■契約をとることが活躍への道

「個人タイトルをとったらボーナス」「トレード禁止」「マイナー降格なし」……、米国の項目は細かい。金額より、「どれだけの契約をとれる選手になるか。米国で長くやり、評価される基準」とドジャース、ヤンキースなどで活躍した黒田博樹は言う。

「200打席以上でボーナス」という契約の選手が到達直前で解雇される、日本なら非情と言われそうなことが「当たり前のように起きる」(黒田)。出来高の割合があまりに大きかったドジャースと前田健太(現ツインズ)のような契約は、選手の立場を不安定にしてしまう。

今季は60試合しかない。FA(フリーエージェント)になる選手にとって、短期間で結果を出すことが必要な厳しいシーズンとなる。故障による離脱も例年以上に契約に影響を及ぼしかねない。

■どのチームも「ほしい」日本人投手は?

投手の評価基準は、打線の援護に左右される勝敗数より、WHIP(投球回あたり与四球・被安打数合計)、防御率、被本塁打数が重要だ。先発投手は「投球回数」と「クオリティースタート(QS、6回自責点3以下)」も鍵になる。

ローテーションは基本5投手で回すため、各先発は年32~33試合、190回近くは投げてほしい。ダブルヘッダー、引き分けのない延長戦もあって中継ぎの工面は大変なので、常に安定して投げてくれる投手が重宝される。

黒田が40歳を前にしても20億円近い金額が提示されたのも、投球回数、QS率などのバランスの良さだ。「言い方は悪いけれど、チームにとって使われやすい選手でありたかった」と黒田。それをハイレベルで達成しているのがバーランダー、今季ヤンキースが投手で史上最高契約をしたコールらだ。

抑えではヤンキース伝説の守護神、マリアノ・リベラは19年の現役生活でWHIP「1」。世界一になったレッドソックスの守護神を務めた上原はなんと「0.89」。42歳までメジャーのマウンドに上がった。

■安打より得点を

走者をため、長打でドカンと返すベースボールこそ、大リーグの王道だ。日本でよく聞く「小技でコツコツ」といった戦術はめったにとらない。

「最も得点との関連性が高い」と言われるOPS(出塁率+長打率)が重視される。「安打製造機」と言われたイチローに打率、安打数、出塁率でかなわなかった松井秀喜だが、長打が多く、OPSは上。「チームの勝利」を最優先するヤンキースの主軸たるゆえんだ。

2020年1月、99.7%もの得票率で殿堂入りしたデレク・ジーター氏。個人タイトルは一つもなく「チームのために戦う」象徴だった=USA TODAY Sports

2020年1月、99.7%もの得票率で殿堂入りしたデレク・ジーター氏。個人タイトルは一つもなく「チームのために戦う」象徴だった=USA TODAY Sports

今季、久しぶりに「和製大砲」の筒香が挑戦する。ここ数年、日本人野手、特に内野手の評価はシビアになる一方だったが、筒香はOPS(日本通算0.910)が評価された。

筒香より年長、OPSも低い秋山が若干評価が高いのは強肩俊足、外野守備の名手だからか。近年、内野守備は「シフト(打者の打球傾向に合わせて守備位置を決める)」が敷かれ、以前ほど美技は求められない。「NYの貴公子」と言われたジーターに代表されるように、「花形=ショートストップ(遊撃)」は過去になりつつある。

(原真子)

グラフィックス 天野由衣、動画制作 今井拓也

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July 11, 2020 at 10:05AM
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